- 高校生の大会でもドーピング検査が行われていること(全試合・全競技者が対象)
- 選手と保護者がやるべき教育の3ステップと、登録コード・選手カードの注意点
- プロテインやサプリに、表示されていない禁止物質が入りうる理由
- Global DROの使い方と、サプリ・漢方薬は対象外といういちばん多い誤解
- 「認証マーク」の種類ごとの違いと、製品名で確認する手順
- 市販のかぜ薬や漢方の落とし穴と、それでも使える市販薬がまとまっているJSPOの「使用可能薬リスト」
- アスリート・カテゴリーと、2027年1月1日に変わる規程(ユースアスリートの保護)
- 迷ったときに、誰にどう相談すればいいか
「部活でプロテインを飲み始めたけど、これって大丈夫なの?」
「高校生の大会でドーピング検査なんてあるの?」
結論から書きます。高校生の大会でも検査は行われていて、年齢による除外はありません。そして、サプリメントが原因のドーピング違反は、調べ方を知らないと防げません。この記事は、選手本人と保護者が自分で一次情報にたどり着けるようになることを目的にまとめました。
なお、この記事では特定の商品を「安全だ」と判定することはしません。それは薬剤師(スポーツファーマシスト)の役割だからです。ここで書くのは、公的な資料の場所と、自分で確かめる手順です。
① まず知ってほしい:高校生も、検査の対象です
「トップ選手だけの話でしょう」と思われがちですが、そうではありません。2026年10月に開催される国民スポーツ大会(国スポ)には少年男子(U-16)の部があり、ここでもドーピング検査が実施されます。
日本スポーツ協会と日本アンチ・ドーピング機構が、国スポの全国代表者会議で配布した資料には、こう書かれています。
全ての正式競技における全試合・全競技者を対象とし、具体的な対象競技、種目、日時、検体数等については事前に公表することなく実施されます
— 日本スポーツ協会・日本アンチ・ドーピング機構「第80回国民スポーツ大会冬季大会におけるアンチ・ドーピング活動について」(全国代表者会議配布資料)
ポイントは2つです。年齢で除外されないこと。そしてどの競技のどの試合で検査をするかは、事前に知らされないことです。「自分は目立つ選手じゃないから関係ない」は通用しません。
選手が署名する「国民スポーツ大会ドーピング検査同意書」にも、はっきり書かれています。
検査対象競技者に限らず、国スポに参加する全ての競技者は、競技会検査(ICT)の対象となることを前提としたスケジュール調整(移動・宿泊手配含む)が求められる
— 公益財団法人日本スポーツ協会「国民スポーツ大会ドーピング検査同意書」(第80回大会〜)
つまり出場する全員が「自分も対象になりうる」前提で動くことを求められているということです。
ドーピング検査同意書には親権者(法定代理人親権者)の自署が必要です。さらに保護者自身もアンチ・ドーピング教育を受け、その受講日・内容・修了証番号を同意書に記入します。同意書については「大会期間中は常時携帯の上、大会終了後も大切に保管しておくこと」と明記されています。つまり制度上、保護者も当事者として扱われています。
出典:日本スポーツ協会「国民スポーツ大会ドーピング検査同意書」(第80回大会〜)。同意書はJSPOのサイトからダウンロードできます
選手と保護者が実際にやること(3ステップ)
2023年度から、国スポではアンチ・ドーピング教育の受講が義務化されました。受けていないと参加資格違反になります。といっても難しいものではなく、少年の部の選手は3ステップです。
- 少年の部向けのウェビナー動画を視聴する
- 「リアルチャンピオンクイズ」のレベル1を受ける(5問ずつの簡単なクイズです)
- 終了時に発行される「修了証」を保存する。スクリーンショットかダウンロードで残したものが、そのまま教育履歴の証明になります
JADAのサイトに公開されています。
第80回国民スポーツ大会 本大会(青森)…aomori2026
第81回国民スポーツ大会 冬季大会…winter2027
受けた記録には有効期間があり、「本戦参加申込締切前の1年以内から同参加申込締切日まで」に受講したものが必要です。早く受けすぎても遅すぎてもいけません。
保護者は2ステップです。保護者向けのウェビナーを選手と一緒に視聴し、サポートスタッフ向けのリーフレットを確認します。そのうえで、選手カード(ドーピング検査同意書)に受講日・内容・修了証番号を記入します。
JSPOは「第79回大会までの選手カードと内容が異なっておりますのでご注意ください」と注意書きを出しています。去年のものを使い回さず、毎回ダウンロードし直してください。
教材・登録コード・選手カードの入手先:日本スポーツ協会「アンチ・ドーピング教育」(japan-sports.or.jp/medicine/doping/tabid1395.html)/JADAクリーンスポーツ・アスリートサイト「国スポ出場者及びサポートスタッフ向け教材」(realchampion.jp/who/kokutai_education.html)
サッカーの少年男子(U-16)は、2026年10月に青森で開催されます。大会の日程や出場都道府県はこちらにまとめています。
少年男子(U-16)の大会概要・全組み合わせ・日程・結果を一挙紹介-160x90.jpg)
② なぜ、プロテインやサプリが「危ない」のか
サプリメントそのものが悪いわけではありません。問題は中身が全部は分からないことです。日本アンチ・ドーピング機構(JADA)は、理由をはっきり書いています。
商品の成分表に全ての原材料を記載する義務がありません。つまり、ラベルやパッケージに表示されていない物質が、その製品に含まれている可能性があります
— 公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構「アンチ・ドーピングとサプリメント」
サプリメントは法律上「食品」の扱いなので、医薬品のような全成分の表示義務がありません。製造ラインが他製品と共用されていて微量に混ざる、原料の段階で混入している——そうした経路で、ラベルにない物質が入りうるということです。
そして、ここがいちばん厳しいところです。
表示されていない物質が原因で、アンチ・ドーピングのルール違反になった場合でも、アスリートはその責任を自身でとらなくてはなりません
— 公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構「アンチ・ドーピングとサプリメント」
③ 薬はGlobal DROで調べます。ただしサプリは対象外です
先に大前提をひとつ。JADAは「治療目的であったとしても、禁止物質や禁止方法がドーピング検査により検出された場合は、「厳格責任」の原則にもとづき、アンチ・ドーピング規則違反が問われることになります」と書いています。病気を治すために飲んだ薬でも、中身が禁止物質なら違反になる。だから飲む前に調べるしかありません。
薬の可否を調べるサイトがGlobal DRO(グローバル・ドロ)です。JADAも案内している公式の検索システムで、使う薬に禁止物質が含まれるかどうかを調べられます(JADAによれば「一部の商品は、商品名での検索が可能」です)。まずは使い方から書きます。
入力するのは4つだけです。
- ユーザータイプ……競技者・コーチ・医療従事者などから選びます。「保護者」も選べます。お子さんの薬を保護者が調べてかまいません
- 競技……126の競技から選びます。サッカーもあります。競技を選ばせるのは、競技によって禁止される薬が違うからです(ベータ遮断薬など)
- 購入国……日本・アメリカ・イギリス・スイス・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドの7カ国だけです
- 薬の名前……「ロキソニンS」のように、パッケージどおりに入力します
結果は「競技会(時)」と「競技会外」に分けて、禁止されるかどうかが表示されます。製品だけでなく主成分ごとの判定も出ます。「ロキソニンS」を日本・サッカーで調べると、製品も主成分のロキソプロフェンも「禁止されない」と出ます。ただし「条件付き/警告」が付くことがあります。ロキソニンSでは、点滴や静脈注射でまとまった量を入れる使い方について注意が出ます。点滴などで12時間に100mLを超えて静脈に入れる行為が、禁止表では「禁止方法」に当たるためです。飲み薬として使うぶんには関係ありませんが、使い方によって答えが変わるということです。
結果画面には参照番号・購入国・競技・検索した日時が表示され、「PDFで見る」から保存できます。同じ画面から「質問をする」でJADAに問い合わせることもできます。
JADAは「薬の確認アクションの記録を残す」として、Global DROの検索結果履歴/スポーツファーマシストへの質問メール・FAXなどの履歴/服用履歴を全て記録・保存するよう求めています。理由もはっきり書かれています。——「違反が問われている物質がどこから自身の体内に入ったのか、リスクに対してどのような行動を取ったかを証明する責任は、あなた自身にあります」。
つまり「ちゃんと調べた」と言うだけでは足りず、見せられる形で残す必要があるということです。
アスリート × Global DRO × スポーツファーマシスト。自分で検索し、そのうえで専門家にも確認する——このダブルチェックをしましょう、という考え方です。どちらか一方では足りません。
気をつけたいのが購入国が7カ国しかないことです。Global DROの「条件及び条項」には、提供しているのはこの7カ国で購入できる医薬品の情報だけであること、そして検索して出てこなかったからといって、その薬をスポーツで使って問題がないとは限らないことが、はっきり書かれています。検索画面を開いたときに表示される注意書きなので、一度読んでみてください。
つまり海外で買った薬・個人輸入した薬は、そもそも調べられないことがあるということ。そして「出てこない=安全」ではないということです。
なぜサプリは調べられないのか
ここからが本題です。Global DROでサプリメントは調べられません。これがいちばん多い誤解です。Global DRO自身が、同じ「条件及び条項」のなかでこう説明しています。
- サプリメントそのものは収録の対象外。拾えるのは、パッケージに書かれた成分名が禁止物質に当たるかどうかまで(ホメオパシーなど代替医療の製品も同じ扱い)
- パッケージの成分をひとつ残らず引いて全部シロだったとしても、その製品が安全だとは言い切れない。「収録されていない」と「入っていない」は別ものだから
- そもそもパッケージに書いていない成分が入っていることがある。Global DRO側が把握していない別の呼び名で書かれている場合もある
- そのうえで、サプリを使うかどうかは自分の責任で判断するように、と念を押しています
日本薬剤師会のガイドブックも、同じことを書いています。
本書は…Global DROに基づき掲載しています。そのため、医薬部外品、健康食品及びサプリメントについては掲載しておりません
— 公益社団法人日本薬剤師会「薬剤師のためのアンチ・ドーピングガイドブック 2026年版」
つまり「Global DROで調べたから大丈夫」が、サプリに関しては成立しないということです。ここを取り違えたまま安心してしまうのが、いちばん危ないパターンです。
| 調べたいもの | どこで調べるか |
|---|---|
| 市販薬・処方薬 | Global DRO(globaldro.com/JP/search)で検索。購入国が7カ国以外のものは対象外。分からなければ都道府県薬剤師会のホットラインへ |
| 漢方薬 | Global DROでは調べられません。JADAが「Global DROには、漢方薬や栄養補助食品に関する情報…は含まれていません」と明記しています。スポーツファーマシストに相談してください(⑦も参照) |
| プロテイン・サプリ・健康食品 | Global DROでは調べられない。第三者認証プログラムのデータベースで、製品名ごとに確認する(次章) |
④ 「認証」は一種類ではありません
サプリのリスクを下げる方法が、第三者認証です。メーカーとは別の検査機関が製品を分析し、禁止物質が入っていないかを確認する仕組みです。
先に言っておくと、認証があるかないかで、リスクはかなり変わります。JADAが紹介している国際オリンピック委員会(IOC)の調査を見てください。
蛋白同化ホルモンの含有が記載されていない634個のサプリメントや健康食品の内、約94個(14.8%)に禁止物質である蛋白同化ホルモンが含まれていたことが判明した
— JADA「サプリメントのリスク」(IOCが2000年10月〜2001年11月に行った国際調査/Geyer H, et al. International Journal of Sports Medicine, 2004)
7個に1個です。しかも「入っている」と書かれていない製品ばかりを調べた結果です。国別ではオランダ25.8%、オーストラリア22.7%、イギリス18.9%、アメリカ18.8%。これが第三者検査を受けていないサプリの世界ということになります。
第三者認証は、ここを潰すための仕組みです。とくにInformed Sportは出荷前に全ロットを検査しているので、認証のない製品とは前提が違います。「どれも同じようなもの」では、まったくありません。
そのうえで知っておきたいのが、認証にも種類があって、厳しさが違うことです。よく見かける4つを比べます。
| 認証プログラム | 検査のやり方 | 想定している利用者 |
|---|---|---|
| Informed Sport (インフォームドスポーツ) | 出荷前に全ロットを検査する | ドーピング検査を受けるアスリート |
| Informed Choice (インフォームドチョイス) | 年12ロット以上を抜き取りで検査する | 運動習慣のある一般の人 |
| BSCG Certified Drug Free | 全ロットを検査。対象物質数が約450と最も多い | アスリート全般 |
| NSF Certified for Sport | ロットごとに検査。製造施設のGMP監査まで求めるのが特徴(検査対象数はNSFの資料により270〜290と表記に幅があります) | アスリート全般 |
Informed Sport と Informed Choice は、どちらも英国LGC社が運営する同じ系列のプログラムですが、前者は全ロット、後者は抜き取りと厳密さが違います。LGCの日本向け情報を公開している日本スポーツ栄養協会(SNDJ)も、両者の違いは「認証後の製品分析の頻度だけ」で、Informed Choiceは第三者が毎月1回市場から抜き取って分析、Informed Sportはすべての製造バッチを分析すると説明しています。
SNDJは、こう注意を促しています。——「国内ではインフォームドスポーツを取得している商品でも、インフォームドチョイスのロゴのみを使用している場合がありますのでご注意ください」。
つまりパッケージにチョイスのロゴしかなくても、中身はスポーツ認証(全ロット検査)ということがあるということです。逆に言えば、ロゴを見るだけでは、どちらの認証なのか分かりません。次の⑤で書くとおり、認証プログラムの検索ページで製品名そのものを引くのが確実です。
JADAが定めたサプリメントのガイドライン自体が、これは「リスクの低減のための指標」を提供するものであって「完全なる安全を保証するものではありません」と明記しています。認証つきを選んでも、最後に責任を負うのが選手本人であることは変わりません。
出典:JADA「スポーツにおけるサプリメントの製品情報公開の枠組みに関するガイドライン」
⑤ 確認の手順は3ステップ。ブランドではなく「製品名」で調べます
ここがこの記事でいちばん実用的なところです。同じブランドでも、製品ごと・味ごとに認証の有無が違います。メーカーの説明に「(一部商品を除く)」と書かれているのは、まさにこのためです。
- 買おうとしている製品の正式な商品名を、パッケージのとおりに書き写す。「新」「DX」「プレミアム」「WPI」などが付くだけで別製品です
- 認証プログラムの検索ページに入れて、その商品名そのものが出てくるかを確認する
Informed Sport … sport.wetestyoutrust.com/supplement-search
Informed Choice … choice.wetestyoutrust.com/supplement-search
BSCG … bscg.org/certified-drug-free-database
NSF … nsfsport.com/certified-products/ - 出てこなければ「認証されていない」と判断する。同じブランドの別商品が出てきても、それは別製品です
ここがいちばん間違えやすいところです。認証はフレーバー単位で付きます。
たとえばNORMのホエイプロテインは6種類の味で売られていますが、Informed Sportの認証リストに載っているのは「チョコレート」だけです。ヨーグルトもストロベリーも抹茶ラテも、リストにはありません。
同じように、Yutritionの「WPIプロテイン」も認証されているのはチョコレートのみ、GO SPORTSの「PROTEIN GOLD」はチョコレート風味とパッションフルーツ情熱風味の2つ、matsukiyo LABの「CPI HYDRO PROTEIN」はミックスベリーとレモンの2つが載っています。
通販サイトは「味を選んでください」という形になっていることが多いので、認証されている味を選んでいるか、注文前にもう一度確認してください。「このブランドは認証を取っている」だけでは足りません。
ここが見落とされがちです。Informed Sportは出荷前に全ロットを検査していますが、確認は「いま手元にある商品のバッチ(ロット)番号」で行います。公式の案内も、パッケージのInformed Sportロゴを確認したうえでバッチ番号を検索機能で照合するという手順です。Informed Sportにはバーコードを読み取って確認できるアプリもあります。
つまり「このブランドは認証を取っている」で終わらせず、買った“その袋”の番号まで確認するのがいちばん確実です。
メーカーが取得済み商品の一覧を公式サイトに載せている場合もあります。たとえば明治のザバスは公式サイトに「アンチ・ドーピング活動に賛同し、国際的アンチ・ドーピング認証の「インフォームドチョイス認証」を取得しています。(一部商品を除く)」と記載し、取得済み商品の一覧ページを設けています。こうした一覧があるメーカーなら、そこで製品名を照合するのが確実です。
⑥ 保護者の方へ:お金の心配は、たぶん必要ありません
「認証つきのプロテインは高いのでは」という不安をよく聞きます。ですが、国内大手メーカーのプロテインにも認証を取得している製品があり、ドラッグストアや量販店で買える価格帯です。高価な専門品を取り寄せる必要はありません。
海外通販の格安サプリ、個人輸入、「筋肉増強」「増量」「テストステロン」「燃焼」などをうたう製品は、表示されていない成分が入っていた事例が世界中で報告されています。友だちや先輩からもらった物、小分けにされて中身の分からない物も同じです。成分を確認できないものは飲まない、が原則になります。
⑦ 実は、市販のかぜ薬や漢方のほうが危ない
サプリの話をしてきましたが、高校生が実際にひっかかりやすいのは、家の薬箱にある市販薬のほうかもしれません。日本薬剤師会のガイドブックから、特に気をつけたいものを挙げます。
| 種類 | 気をつける理由(出典:日本薬剤師会「薬剤師のためのアンチ・ドーピングガイドブック 2026年版」) |
|---|---|
| かぜ薬 (総合感冒薬) | 「パブロン、ベンザブロック、ルルシリーズ、ストナシリーズのほとんどには、禁止物質(メチルエフェドリン、プソイドエフェドリン、麻黄)が含まれている」と明記されています。体調を崩したときに家にある薬を何気なく飲む、というのが最も危ない場面です |
| 漢方薬 | 「漢方の風邪薬は効果が穏やかだと思われがちだが、よく使われる漢方薬(葛根湯・小青竜湯など)には禁止物質(麻黄)が含まれている」。麻黄はエフェドリン類です。さらに漢方は原則としてTUE(治療使用特例)の申請ができません |
| 鼻炎薬・点鼻薬 | 「市販の鼻炎用薬には興奮薬として禁止されるプソイドエフェドリンが配合されていることが多く、注意が必要です」。点鼻・点眼の血管収縮剤は局所使用なら許されますが、何回も多量に使うと違反が疑われる可能性があります |
| せき止め・のど飴 | 「市販の鎮咳去痰薬に含まれるトリメトキノール、メトキシフェナミンは禁止物質とみなされます」。のど飴にも禁止物質ヒゲナミンを含むものがあります |
| 胃腸薬 | 生薬チョウジ(ヒゲナミン)、ホミカ(ストリキニーネ)を含むものがあり、「検出されれば直ちに違反となります」 |
| 滋養強壮薬 栄養ドリンク | テストステロン等の蛋白同化薬、海狗腎・麝香・鹿茸などを含むものがあります。「国スポ期間中に限らず、普段から使用しないようにしましょう」と書かれています |
| 毛髪・体毛用薬 | 「毛髪・体毛用塗り薬では、男性ホルモンが配合されているものがあり、禁止されています」。禁止されるのは男性ホルモン配合のものです。一方でミノキシジル(リアップ)は同書の使用可能薬例に挙げられています。「育毛剤は全部だめ」ではなく、成分で決まります |
| 口内炎の薬 | 競技会時に禁止される糖質コルチコイドを含む軟膏が多いとされています |
| 痛み止め・熱さまし | ロキソニンS・ロキソニンSプラス・ロキソニンSプレミアム、バファリンA、バファリンルナJ、タイレノールA、カロナールAなどが使用可能薬の例に挙げられています。ただし「製品名全体が完全に一致することを確かめる」のが条件です |
| エナジードリンク | カフェインは現在禁止物質ではありませんが、WADAの監視プログラムに入っており「検査結果は従来どおり報告される」状態です |
漢方薬は生薬の集まりで、成分をひとつずつ特定するのが困難です。そのうえTUE(治療のための例外申請)は物質名に対して行うものなので、方剤名(葛根湯など)では申請できません。体調を崩したら、自己判断せずスポーツファーマシストか、かかりつけの薬剤師に相談してください。
でも「かぜ薬は全部だめ」ではありません
ここまで読むと「体調を崩しても何も飲めない」と思ってしまいますが、そうではありません。日本スポーツ協会(JSPO)は「使用可能薬リスト」を公開しています。国スポを運営している団体が、選手向けに出しているものです。ここには競技会時を含めていつでも使える医薬品が、処方薬と市販薬に分けて26のカテゴリーで並んでいます。
たとえば、かぜ・せき・鼻の市販薬にはこれだけ載っています。
| 症状 | 使用可能薬リストに載っている市販薬の例 |
|---|---|
| かぜ (総合感冒薬) | パイロンPL錠、パイロンPL錠ゴールド、パイロンPL顆粒、パイロンPL顆粒Pro/パブロンSゴールドW錠、パブロンSゴールドW微粒 |
| せき・たん | 新コンタックせき止めダブル持続性/メジコン咳止め錠Pro/ムコダイン去たん錠Pro500/ストナ去たんカプセル |
| 鼻づまり・鼻炎 | エージーアレルカットEXc/パブロン鼻炎アタックJL |
前の表で挙げた薬剤師会ガイドブックの記述は「パブロン、ベンザブロック、ルルシリーズ、ストナシリーズのほとんどには、禁止物質(メチルエフェドリン、プソイドエフェドリン、麻黄)が含まれている」というものでした。「ほとんど」であって全部ではなく、パブロンSゴールドW錠・同微粒はJSPOの使用可能薬リストに載っています。だからこそリストは「市販薬には禁止物質(エフェドリンなど)が配合された製品が多いため、製品名全体が完全に一致することを確かめる」と書いています。同じシリーズでも、名前が1文字違えば別の薬です。
リストには「かぜの特効薬はないので、症状にあわせて①、④、⑭などの薬を選んで使用した方が有効な場合もある」とも書かれています。この丸数字はリスト自身の項目番号で、①は「熱・痛み(鎮痛・解熱・抗炎症薬・片頭痛薬)」、④は「せき・たん・のど(鎮咳去痰薬)」、⑭は「鼻づまり(耳鼻用薬)」です。つまり、総合感冒薬でまとめて抑えようとするより、熱なら解熱鎮痛薬、せきならせき止め、鼻なら鼻炎薬と分けたほうがいい、とリストが直接すすめているということです。
- 有効期間があります。現在のものは2025年12月1日〜2026年12月31日版です
- 「本リストは例示であり、他にも多くの使用可能な医薬品があります」。載っていない=禁止、ではありません
- 「使用量が少なく尿中濃度が低ければ使える医薬品などもありますが、そのような使用条件に制限がある医薬品はあげておりません」。つまり載っているものは、量を気にせず使える薬です
- 「特定競技において使用が禁止される薬もあります」。ベータ遮断薬のように、競技によって扱いが変わるものがあります
なおジェネリック医薬品(後発医薬品)は「先発医薬品と同等の有効成分を含有しておりますので、基本的には使用可能です」と明記されています。
出典:公益財団法人日本スポーツ協会「アンチ・ドーピング 使用可能薬リスト 2025・2026年度版」(japan-sports.or.jp/medicine/doping/tabid537.html からダウンロードできます)
⑧ そもそも、そのサプリは必要ですか
最後に、いちばん大事なことを書きます。世界アンチ・ドーピング機構も国際オリンピック委員会も、必要な栄養はバランスの良い食事からとることを勧めています。「Food First(食事第一)」という考え方です。
日本スポーツ協会の使用可能薬リストにも、こう書かれています。「各種ビタミンは禁止されていない。しかし、ビタミン類に種々の強壮薬などを配合した製剤、とくに外国製品には禁止物質を含むものがある。医薬品の場合には内容を明記してあるが、医薬品以外は使用しないほうが賢明である」。ビタミン剤そのものではなく、何が混ざっているか分からないことが問題だという整理です。
JADAも、サプリメントは日々の食事の不足や偏りを埋めるためのものではないという立場を示しています。中学・高校生年代であれば、まずは食事・睡眠・練習量のバランスを整えるほうが、効果もリスク管理の面でも確実です。
⑨ 高校生には「守る側」の制度もあります
ここまで「責任は最後は選手本人」と書いてきました。それは事実ですが、年齢や競技レベルに応じて扱いを変える仕組みも用意されています。知らないままでいるのはもったいないので、2つ紹介します。
アスリート・カテゴリー
2021年版の世界アンチ・ドーピング規程から、競技レベルや年齢に応じた「アスリート・カテゴリー」が明確になりました。JADAはこう説明しています。
地方大会に出場するアスリートや、(様々な)意思決定にサポートが必要な若い世代のアスリートに対するアスリート・カテゴリーが明確になりました。これらのアスリートに対しては、世界トップレベルの経験が豊富なアスリート等よりも、アンチ・ドーピング規則違反に対する柔軟な制裁が適用されます
— JADA「アスリート・カテゴリー チェッカー」
カテゴリーは国際レベル/国内レベル/上記以外/レクリエーションの4つに分かれています。注意したいのは、「上記以外のアスリート」は制裁の柔軟な対応が”なし”とされていること。「高校生だから軽く済む」と決まっているわけではありません。自分がどのカテゴリーかは、JADAの「アスリート・カテゴリー チェッカー」(realchampion.jp/checker_category/)で確認できます。これは制裁の話だけではありません。国スポには「国内最高レベルの競技大会」に指定されている競技があり、TUE(治療使用特例)の申請期限や申請先がカテゴリーによって変わります。治療で禁止物質を使う必要がある選手は、事前に確認しておく必要があります。
2027年1月1日、ルールそのものが変わります
毎年1月1日に改訂されるのは禁止表ですが、2027年1月1日には、世界アンチ・ドーピング規程(Code)そのものが一部新しくなります。JADAは2027年版を「『アスリートを守る』視点をより強化した改定」と説明していて、高校生に関係が深い項目が並んでいます。
- ユースアスリートの権利を尊重して守る……「子どもや若い選手には特別な保護ルールを適用」
- 意図しない禁止物質の摂取への対応を強化……「気づかないうちに禁止物質を摂取してしまった違反に対して、制裁期間の検討の枠組みが整理」
- コーチやスタッフにも明確な責任……「未成年や保護が必要なアスリートによる違反の場合…その背後関係を必ず調査する」
整理されるのは制裁期間の検討の枠組みであって、体内に入れたものの責任が選手からなくなるわけではありません。この記事で書いてきた「口に入れる前に確かめる」は、2027年以降も変わらず必要です。変わるのは、確かめたうえで起きてしまったときの扱いと、周りの大人の責任が問われるようになることです。
出典:JADA「世界アンチドーピング規程2027」(realchampion.jp/2027code/)
⑩ 迷ったときの相談先と、自分で調べられる一次情報
相談する
- スポーツファーマシスト検索(sportspharmacist.jp/search/)……アンチ・ドーピングの知識をもつ薬剤師を、地域や対応時間(土日祝・夜間など)で探せます。選手本人だけでなく、保護者やスタッフも相談できます
- 都道府県薬剤師会のホットライン……各薬剤師会のホームページから、所定の方法で問い合わせます。「医薬品を正確に確認するため、電話では回答できません」とされており、記録の残る形(FAX・メール等)での受付です。ガイドブックには問合せ用の専用用紙も収録されています
自分で調べる(すべて公的な一次情報です)
- 保護者向け教材/JADA……realchampion.jp/who/parents.html。「CLEAN ATHLETE GUIDE ユースアスリート向け」(対象はユースアスリート及びそのサポートスタッフ=保護者を含む)、リーフレット「未成年アスリートの保護者/サポートスタッフ向けアクションポイント」、マンガムービー全16本などがあります
- 国スポ出場者向け教材/JADA……realchampion.jp/who/kokutai_education.html。ウェビナー・クイズ・リーフレットなど、受講に必要なものが全部そろっています。少年の部・保護者・サポートスタッフで内容が分かれています
- 使用可能薬リスト(2025・2026年度版)/日本スポーツ協会……japan-sports.or.jp/medicine/doping/tabid537.html。まずこれを見るのがいちばん早いです。競技会時を含めて使える医薬品が、処方薬・市販薬に分けてA3の2枚にまとまっています。印刷して薬箱に貼っておける形です
- 2026禁止表国際基準(日本語版)/JADA……playtruejapan.org/code/provision/world.html。毎年1月1日に改訂されます
- アンチ・ドーピングとサプリメント/JADA……playtruejapan.org/code/rule/supplement.html
- Global DRO(薬の検索)……globaldro.com/JP/search。サプリは対象外です
- 薬剤師のためのアンチ・ドーピングガイドブック(2026年版)/日本薬剤師会……nichiyaku.or.jp/yakuzaishi/activities/anti-doping/about。全文がPDFで公開されています(112ページ)。市販薬の可否がいちばん詳しく載っていて、この記事でも何度も引用しています。毎年更新されます
この記事は、選手・保護者が自分で一次情報にたどり着けるようにすることを目的にまとめたものです。特定の製品や薬が使用可能かどうかの最終判断は、必ずスポーツファーマシスト等の専門家に確認してください。禁止表は毎年改訂されるため、シーズンごとに最新版を確認することをおすすめします。
まとめ
- 高校生の大会でも検査はあり、年齢による除外はない。全試合・全競技者が対象で、どの試合で行うかは事前に公表されない
- 18歳未満は親権者の自署と、保護者自身の教育受講が必要。受講はウェビナー→クイズ→修了証の3ステップ。制度上、保護者も当事者
- サプリは表示されていない物質が入りうる。それでも責任は選手本人
- 薬はGlobal DROで調べる。ただしサプリと漢方薬は対象外。「調べたから大丈夫」がいちばん多い誤解。調べた記録は保存する
- 認証は一種類ではない。Informed Sport は全ロット、Informed Choice は抜き取り
- ブランドではなく製品名で調べる。同じブランドでも製品ごとに違う
- 認証品は高くない。危ないのは素性の分からない格安品・個人輸入・もらい物
- 実は市販のかぜ薬と漢方のほうがひっかかりやすい。葛根湯にも麻黄が入っている
- ただし「かぜ薬は全部だめ」ではない。JSPOの使用可能薬リストに載っている市販薬がある
- 2027年1月1日から規程が変わる。ユースアスリートの保護と、周りの大人の責任が強化される
- 迷ったら飲まない。スポーツファーマシストに聞く
プロテインもサプリも、正しく選べば味方になります。大切なのは「良さそうだから飲む」ではなく、「確かめてから飲む」に変えることです。その手順さえ身につけば、選手も保護者も余計な不安を抱えずに済みます。
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